新型コロナウィルスの影響で、中小企業の資金繰りが急激に悪化しています。
日本政策金融公庫によると、3月24日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で資金繰りに不安を抱える中小・零細事業者からの相談件数が22日時点で約9万1,000件に上ったと明らかにしています。
(時事ドットコムニュース 2020年03月24日16時45分 より)
15日時点から一週間で相談件数は2.5倍に急増しているらしく、中小企業の資金繰り不安がますます拡大している状況ですね。
前回、資金繰り対策としてセーフティーネット利用についての記事を書きました。
この制度は企業の資金繰りを安定させるという観点からは、非常に有効です。
しかし、各地公体窓口には連日コロナウィルスの影響による売上減などの要件の認定を得るため、長蛇の列が出来ている状況で、思うようにすぐ認定が取得できないのが実情です。
また、セーフティネット融資の要件に該当し認定を無事取得できたとしても、銀行などの金融機関で申込をして融資を受けるまで、どれだけスムーズにいっても書類の準備や金融機関の審査期間を考慮すると、1週間はかかってくるのではないでしょうか。
金融機関の融資というのは、国がある程度保証するようなセーフティーネット融資、銀行独自審査のプロパー融資などがありますが、とにかく資料と時間と諸費用(印紙代や公的書類の取得など)がかかることが以前から課題といわれています。
今般のようなパンデミックに陥った際、真っ先に事業の継続性が危ぶまれるのは、資金繰りに不安のある中小、零細企業になると思います。
今日は、そのような事業者の方に銀行融資のもう一つの選択肢として、昨今ニュースなどでも取り上げているAI融資の利用の是非について検討していきます。
AI融資とは
AI融資とは、以下の内容です。
ANA Financial Journalより一部抜粋
AI融資では、人工知能(AI)が、口座の入出金情報やクラウド会計データ、イーコマース情報などを元に、企業あるいは個人の信用力を判断します。
AIによる審査では、銀行口座への入出金や決済データを自動で分析し、融資可能かどうかを判断します。
当サービスはIT分野では日本のだいぶ先を進んでいる中国から始まり、遅れて日本では2019年上半期からメガバンクでもサービス提供を開始したこともあり、徐々に認知されるようになってきています。
AI融資とは「オンラインで取得できる様々な情報をもとに、人口知能が独自のアルゴリズムで法人や個人をスコアリング化し、決算書などの資料がなくても融資審査を自動的にスピーディに行うことが可能な融資」です。
まさに、FinTech(フィンテック)の一翼を担うサービスであり、当サービスを通じてビッグデータの蓄積、活用も更に生まれることが期待されています。
各社サービス
前述のとおり、2019年にはメガバンクでのAI融資サービスも開始しており、銀行・IT企業の各社サービスの比較を記載します。
サービス内容については、各社のHPから確認していますが詳細は各自でお問い合わせください。
銀行サービス
みずほ銀行と三菱UFJ銀行のサービスは以下です。
地方銀行や信金・信組は一部実証実験など開始している金融機関もあるものの、残念ながら単独での融資商品を展開するまでには至っていないのが実情です。
銀行 | みずほ銀行 | 三菱UFJ銀行 |
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商品名 | みずほスマートビジネスローン | Biz LENDING |
サービス概要 | ✓事業法人向け、オンラインレンディングサービス
| ✓中小企業の資金ニーズに早期に応える資金調達サービス
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利用可能な方 | ✓すべての条件を満たす日本国の法律に基づいて設立された法人
※法人の代表者によるお申し込みが必要 | ✓日本の法律に基づいて設立された法人の内、以下の条件を全て満たす顧客(※)
※借入にあたっては所定の審査あり |
申込方法 | みずほスマートビジネスローン専用ホームページにて、借入準備完了後に申込可能 ※みずほスマートビジネスローン専用ホームページへのアクセス方法は、インビテーションにより案内あり | 専用 HP より、申込から契約までの手続が可能 (URL:https://lending.corporate.bk.mufg.jp) 手続は、24 時間いつでもオンラインで可能(※) ※電話での問い合わせ窓口は 9:00~17:00 の間、受付可能 |
借入金額 | 10 万円以上、最大 1,000 万円※(5 万円単位) ※借入可能額はお借入準備完了後に案内がある ※借入可能額は随時見直される | 50 万円以上、最大 1000 万円(10 万円単位) |
借入期間 | 12 ヵ月以内(1 ヵ月単位) | 元金均等返済の場合:6 ヶ月以内 期日一括返済の場合:3 ヶ月以内 |
金利 | 1%台~14%(年率) ※借入利率は借入準備完了後に案内あり | 15%未満 |
資金使途 | 運転資金 | 運転資金・納税資金・設備資金・賞与資金 等 |
返済方法 | 元金均等返済 | 元金均等返済、期日一括返済のいずれか |
審査回答 | 正式審査の申込みから最短 2 営業日 | 申込みから最短翌営業日 |
担保 | 不要 | 不要 |
保証 | 代表者の連帯保証が必要 | 不要 |
手数料 | 無料 | 無料 |
銀行系は法人かつその銀行で口座を開設していることが要件になるから、ハードルは決して低くないけど、オンラインでスピーディに融資を受けられる可能性があるね
IT企業
ここではアルトア株式会社とRENDY株式会社のサービスを記載します。
内容は以下です。
企業名 | アルトア株式会社 (https://www.altoa.jp/company.html) | LENDY株式会社 (https://www.lendy.jp/company/) |
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商品名 | ALTOA(アルトア) | クレジットエンジン LENDY |
サービス概要 |
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利用可能な方 |
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業歴半年以上であっても、審査によっては利用できない場合もあり
<連携対象サービス>(2018年1月現在) |
申込方法 | アカウント登録をし、ログイン後基本情報を入力、会計データをアップロード 以上でオンラインでお申込みが完結 | 借入準備手続き後に、表示される「お借入申し込み」ボタンをクリック その後、表示される借入申し込み画面より、希望額ご融資期間ご返済回数お借入目的を選択の上、その後に表示されるご契約内容並びにお申し込み条件等を確認し申込完了 |
借入金額 | 50 万円以上、最大 300万円(10 万円単位) | 10 万円以上、最大 500万円 |
借入期間 | 最長12 ヵ月以内(1 ヵ月単位) | 最長12 ヵ月以内(1 ヵ月単位) |
金利 | 2.8%~14.8%(年率) | 8.0%~18.0%(年率) |
資金使途 | 事業に必要とされる資金 | 資金使途の制限なし |
返済方法 | 元金均等返済、期日一括返済のいずれか | ー |
審査回答 | 最短即日 | 最短即日 |
担保 | 不要 | 不要 |
保証 | 不要 | 代表者の個人保証は必要 |
手数料 | 無料 | 無料 |
IT企業系は、クラウド会計を重視しているけど、要件をクリアするのは銀行系に比べると比較的に容易だね。
AI融資のメリット・デメリット
AI融資のプロコンとしては以下が挙げられるのかなと思っています。
- 要件さえ満たせば融資までのスピードがメッチャ速い
- オンライン上で登録~審査まで可能なのでわざわざ書類を大量に集めて提出する必要がない
- 金利以外の諸費用がかからない
- サービス利用の要件が少々厳しい(銀行での入出金要件や、各種クラウド会計の要件など)
- 返済期間が1年未満であり、銀行融資やセーフティーネット融資に比べると月々の返済負担は大きい
- 金利が一般の銀行融資に比べると相対的に高い傾向
- AI審査の基準が見えづらい部分はある
まとめ
- AI融資というシステムは、中小・零細企業にとって、突発的な事態での資金繰り安定資金の調達手法として有効であるので、銀行融資の補完として押さえておきたい
- AI融資の判断目線としては、過去の入出金の動きによる回収可能性や、会計上疑義の生じる取引をしていないかなどの要因でスコアリングされていると思われる。そのスコアリング内容が金利水準など条件の決定要因となるため、平常時から資金計画や、会計処理が何よりも大切
- 金利水準については一般の銀行融資に比べ割高となる可能性はあるので、安易に利用するのではなく、よく検討の上調達することが大切
最後にぼくの所感を。
日本では今はまだサービス黎明期なので、金利や金額面で銀行融資の方が優位である点も少なくないと思いますが、ビッグデータの蓄積が進んだり、利用者が増加することで銀行融資より優位になってくる可能性は十分にあると思っています。
コロナウィルスの影響を契機として在宅勤務の導入など働き方や生活方式などが変化している中、AIを利用したサービスが今後ますます増加してくるのではないでしょうか?
本記事で少しでも中小・零細企業の役にたてれば何よりです。
では今日はここまでにします。いつもありがとうございます。