こんにちは、てつやです。
新型コロナウィルスの影響もあり、中国現地法人のM&Aを検討する企業が増加しています。
中国現地法人の撤退については、大きく分けると「清算」、「解散」、「M&A(持分譲渡)」があります。
本日は、中国に現地法人のある企業が撤退を検討する背景、考えるタイミングとM&Aが成功する条件についてお伝えしていきます。
中国撤退時のM&Aとは?
中国撤退時のM&Aとはいわゆる持分譲渡と呼ばれます。
持分譲渡とは、ある会社に投資している企業がその保有する出資持分(株式)を他の会社に譲渡することです。
本ブログでは、日系企業が中国に出資した子会社を売却し、撤退する手法の一つとしてお伝えしていきます。
M&Aによる撤退のメリットは、
✔資産・負債の処分が必要なく相手先に譲渡できる
✔従業員の経済補償金(退職金)を払う必要がない
✔売却代金を日本国内に送金できる
ことです。
なので、撤退時に清算よりもまず先に検討する手法となります。
一方で、相手先があってこそ成立する手法ですので、実際当手法を使って撤退できているケースがさほど多くないのも事実です。
本日は、持分譲渡によって相手先が見つかる可能性のある企業のポイントをお伝えしていきます。
当ブログに記載の企業様であればM&Aを検討されてもいいのではないでしょうか?
まずは、なぜ中国から撤退しないといけないのか背景について触れておきます。
なぜ中国から撤退するか?~中国ビジネス環境の変化~
①中国進出日系企業の動向~中国進出数~
以下は帝国データバンク調べによる日系企業の中国進出数です。
2020年1月時点での日系進出企業数は、1万3,646社です。
2012年をピークとして、中国にある日系企業数は減少傾向となっております。
2012年比 ▲748社
2019年比 ▲39社
②中国進出日系企業の動向~業種、地域別~
以下は日系企業の中国内の業種、地域別の分布です。
中国でビジネスをする企業は、製造業、卸売業が7割超あり、華東エリア(上海、江蘇省、浙江省)などが中心です。
このトレンドは過去からほとんど変化がないです。
足元の状況から、なぜ日系企業数は中国内において減少傾向であるかお伝えします。
中国進出企業が減っているのはなぜ?
要因については、主に中国経済の影響と自社内の環境変化の2つがあります。
✔2013年以降中国経済は徐々に減速(GDP10%⇒6.5%)
✔内需の拡大を目的とする2010年~2020年の間で所得倍増政策で人件費高騰
✔米中摩擦の発生
✔環境規制の強化
✔新型コロナウィルスの影響で消費の伸び悩み
によって企業の撤退やASEAN諸国への移管の検討に繋がっています。
✔中国に進出したが、マーケットに入り込めないことから慢性的な赤字継続
✔生産効率が十分に上がらないことから慢性的な赤字継続
✔親会社が新型コロナウィルスの影響で資金的余裕が減少した
✔中国に駐在させられる人材不足
✔カントリーリスクが恒常的に発生
によって撤退を検討するケースが増加しています。
商習慣やコンプライアンス意識などが全く違う中国でビジネスをするということは生半可な覚悟では成立しません。
外部要因、内部要因は事業の継続を検討する際に常に頭にいれておかねばなりませんが、中国でのビジネスでは特に考慮しておかねばなりません。
では具体的にどういった際に撤退を検討すればよいのでしょうか。
中国から撤退を検討するタイミング
例えば、以下のケースが複数あれば撤退を検討しても良いかと。
- 3期連続で赤字
- 売上金額、利益金額が3期横ばい又は減少
- 債務超過
- 合弁の場合相手方との関係が急にギクシャクしてきた
- 人件費、材料費の高騰を考えると今後が見通せない
- 日本人駐在員(候補)がいない
- 日本からの資金送金の余裕がない
では、M&Aでの撤退が可能となるケース、成功する可能性が高いケースはどういったものなのでしょうか?
M&Aが成功する条件
当然かもしれませんが、企業を他社に売却するということであれば、相手方に何らかのメリットがなければ契約に至れません。
例えば、以下となります。
- しっかりとした顧客資産を有している(日本の有名ブランド)
- 将来性のある事業
- 過剰労働要因を抱えている(リストラすれば黒字化可能)
- 特許など優秀な技術を有している
- 生産コスト管理が、組織的にコントロールされている
- 含み益のある土地使用権を有している
①~⑤については、自社のもつリソースでは中国での事業拡大は難しいと判断されるものの、他社には使い方によっては魅力があることから譲渡の可能性が出てきます。
日本で素晴らしい技術や生産管理方法を中国でそのまま利用していてもマーケットに理解されず宝の持ち腐れとなっていることはよくあることです。
上記ケースは客観的に価値の判断基準をつけることが難しいので、譲渡金額などの交渉で難航することも予想されます。
一方⑥のケースであれば、自社の土地使用権の価値は中国の不動産鑑定士や会計士によって客観的な金額が出てくるので譲渡代金の交渉もスムーズにいくケースも多いです。
残念ながら①~⑥以外のケースであれば、清算手続きを粛々していく方が余計な費用(FA費用、弁護士費用など)や譲渡先を探す時間が無駄にならずによさそうです。
まとめ
中国に進出済の日系企業は新型コロナウィルスの影響もあり、今後も撤退を継続的に検討していくことになると思います。
撤退をするのであればまずはM&Aで出来ないかどうか、本日お伝えしたポイントを踏まえて検討してみてください。
では今日はここまでにします。いつもありがとうございます。