(2020年1月から)中国への合弁企業進出。外商投資法と定款作成についてのポイント

中国への合弁進出。法律改正のポイント 中国

こんにちは、てつやです。

2020年1月1日より『外商投資法』が施行されており、中国での合弁進出におけるそのポイントと定款策定のノウハウについて本日は解説します。

日系企業の中国進出件数は2005年をピークとして、2008年リーマンショックや2012年尖閣問題などで下落しましたが、近年は徐々に増加傾向です。

その中で、進出形態の変化がみられています。
2002年以降は外資企業に対する規制緩和の影響で独資での進出が増加しましたが、近年は中国企業との合弁での進出が増加が一つのトレンドです。

背景には中国の経済成長による事業環境の変化にともない、「世界の工場」から「世界のマーケット」へと変貌を遂げる中で、独資ではマーケットを狙う上で困難なケースも多いことがあります。

日中合弁時における外資企業が知っておくべき法律は

日系を含む外資系企業が中国で合弁組成する際の法律には、設立の時期によって変わってきますが、「中外合資経営企業法」、「会社法」、「外商投資法」が主な関連法律となります。

2020年までは合弁企業にとって「中外合資経営企業法」が、「外資企業法」、「中外合作経営企業法」と並び外資三法として、外資系企業の中国進出の基本法でしたが、今後は2020年1月から施行の「外商投資法」が重要な法律となります。

外商投資法とは

「外商投資法」は、2019年3月15日の全人代で可決されました。
外資三法に代わる外資系企業の基本法として2020年1月1日より施行されています。
成立の背景としては、米中貿易摩擦による米国からの要求にも応えるべく「市場開放」、「投資保護」、「知財保護」、「技術移転強制」などを踏まえることが中国政府にとっても喫緊で必要となったからです。

中国あるあるで、本条文もご多分にもれず網羅的ですが、外資企業にとって、公平な市場参入知財保護強制収用の不実施技術強制移転の禁止など外資の権利を保障する条項も多く盛り込んだ内容となりました。

合弁進出時の注意点とは

2020年1月1日から施行の「外商投資法」で合弁組成について以下には注意が必要です。

Point!

 

  • 外資企業の組織形態や活動基準について「会社法」を適用すると明記
  • 過去、「中外合資経営企業法」に基づき設立された合弁企業は董事会が最高意思決定機関となっているが、会社法では株主会を頂点とするため組織形態や意思決定のあり方が異なる
  • 既存の合弁企業は5年の時限措置期間中に、株主会を頂点とする会社組織への変更を求められる可能性あり

董事会運営と株主会運営で押さえておくべき違いは以下です

董事会運営
  • 議決は合弁当事者が派遣する董事の比率で決まる
  • 重要事項については全会一致事項
  • つまり重要事項についてマイノリティ出資者には拒否権がある
株主会運営
  • 議決は合弁当事者の出資比率で決まる
  • 重要事項について、2/3以上の出資者は単独可決が可能となる
  • つまり重要事項についてマイノリティ出資者には拒否権がなくなる

重要事項とは、定款の修正、企業の中止・解散、増資・減資、合併・分割など企業経営にとって重要な事項を指しています。

従来、各合弁出資者における董事の任命割合は、出資比率を参考にして決定するとの規定はあるものの定款にて一定の柔軟な定めもされてきました。
たとえば、出資割合は低いものの技術提供、土地の提供等により貢献が大きい出資者が、比較的多くの董事を派遣するケースなどです。

一方、株主会の議決権は、出資比率によって定まるのが原則であり、定款にて出資比率と異なる議決割合を定めることも認められているものの実際はどのような運用となるかまだ不透明です。

中国では行政エリア特有の法律や運用があったりすることもあるため、個別事象については事前に管轄当局に確認する必要があります。 
Point!

 

これまで以上に合弁時には合弁契約書や定款の策定を慎重に行うことが必要。
日系側にて経営をコントロールしたいのであれば、マジョリティ出資で比率2/3以上を取りに行くことが望ましい。
マイノリティ出資の場合でも出資比率1/3以上の方が望ましい。

中国での定款の意義とは

中国に設立する企業の基本的な規則を制定するものです。
合弁で進出するのであれば、合弁契約書や合弁相手と交渉してきた様々な事項を盛り込み、中国政府に対して「このような企業を作り、その経営実行に当たってはこのように進めます」ということを記載するものです。

そのため、主張すべき権利事項は十分に書き込まなければなりません。
各地の行政当局備えつけの定款フォームで一辺通りの内容を記載し、気軽にサインをして事務的に会社を設立してしまうと、「こんなつもりじゃなかった」ということになりかねません。

日中法律、言語に精通した弁護士などの協力も得ながら慎重に進めましょう。

定款記載事項

定款に一般的に記載すべき事項は以下です

  1. 合弁企業の名称および法定住所
  2. 合弁企業の目的、経営範囲および合弁期限
  3. 合弁各当事者の名称、登録国家、法定住所、法定代表者の氏名、職務および国籍
  4. 中外合弁企業の投資総額、登録資本、合弁各当事者の出資額、出資割合、出資方式、出資の払い込み期限、持分譲渡の規定、利益分配および損失分担の割合
  5. 董事会の構成、職権および議事規則、董事の任期、董事長、副董事長の職責
  6. 管理機構の設置、事務処理規則、総経理、副総経理及びその他の高級管理人員の職責および任免方法
  7. 財務、会計、監査制度の原則
  8. 解散および清算
  9. 定款修正の手続 

などです。
合弁契約書の内容と齟齬がないかや、日中版の翻訳で微妙なニュアンスに違いがないか、日文版には記載があるのに中文版には記載が抜けているということが往々にして意図しようがせまいが発生するので慎重にチェックしましょう。

まとめ

世界のマーケットを狙い、中国への合弁進出は今後も増えてくることが予想されます。
その際、2020年1月1日より施行の外商投資法の運用については各エリアの法律や運用方法についても確認しながら、日中の法務に精通した弁護士の起用を検討しましょう。

では今日はここまでにします。いつもありがとうございます。