こんにちは、てつやです。
2020年4月21日、とんでもないニュースが飛び込んできましたね。
そうです、原油価格がマイナスになりました。
朝日新聞web2020.4.21
世界の原油市場で動揺が続いている。米国産WTI原油の先物価格が、史上初のマイナスをつけた。新型コロナウイルス対策で需要が急減し、在庫がだぶついていることが背景にある。
うん?マイナス?
お金をもらって原油を引き取れるってこと?
これは歴史的な出来事です。
今日は、原油価格が下落した原因と、今後予想されるマーケットの動きを考えます。
歴史的原油価格下落の原因
OPECと非加盟国との協議
日経新聞2020/3/7電子版 OPECと非加盟国、減産強化で合意できず ロシア抵抗
に出ているように、OPECとロシアが3月末の減産協議を重ねたものの、協議が決裂したことで1バレル45ドルまで下落しました。
背景には、ロシアが過去米国のシェールガス革命によって自国の原油生産能力を遊ばせてきたことがあり、今回の減産で価格を下支えすると、米国に塩を送ることになると判断したようです。
この協議では、参加各国の石油相が沈黙し、まるでお通夜のようだったといいます。
サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は他の石油相らに対し、真面目な話だと断り、全員がこの日の決定を悔やむだろうと重大な警告を発したそうです。
これが今回の急落の序章でした。
サウジアラビアが増産発表
日経新聞2020/3/31電子版 世界の供給過剰2000万バレルに サウジが原油増産強行
今度はサウジアラビアが、ロシアや米の減産要請を拒否しました。
この発表で、世界の原油需給バランスが一気にバランスを崩し、供給過多になってしまいました。
コロナウィルスの影響
そもそも中国発の新型コロナの感染拡大で、企業活動や人の移動に制限がかけられ、工場が停止したり、輸送が止まったことで燃料需要が減少していました。
そういった背景もありながら、サウジなどOPEC加盟国は原油価格の下落に歯止めをかけるため、減産の拡大を進める考えでしたが、お互い意地を張ったがために、供給が過剰になってしまいました。
原油価格の変動要因
今回の事例でもおわかりかと思いますが、そもそもの原油価格の変動要因についてお伝えします。
原油も市場原理通り、需要と供給のバランスで価格が決定されています。
価格の決定方法
- 需要>供給→価格が上昇(生産者が嬉しい)
- 需要<供給→価格が下落(消費者が嬉しい)
ということですね。
そして、原油相場を見るにあたって注目すべき最大のポイントOPECの原油供給動向です。
原油は限られたところ(現在はほとんど中東か北米)でしか産出されません。
OPECとは「石油輸出機構」と呼ばれイラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラをはじめ15の石油産出国で構成された世界最大のカルテルです。
この15ヶ国が主要な石油産出国であり世界の供給者です。
なので、彼らの供給量次第で、原油価格が変動するというわけです。
この世界は何をするにしても石油がエンジンとなります。
移動手段にしても、生産活動を行うにしても、衣服にしても石油製品です。
どれだけ需要が減ったとしても一定の需要があるために、その需要に合わせて供給量を決める担い手という立場としてOPECは存在してきました。
産油国と消費国
主要な産油国と消費国のデータを見てみると、原油価格決定の要因がなんとなく理解できます。
まずは、主要な産油国はこちらです。
2018年産油国上位5ヵ国
2018年 | 国名 | 生産量(千トン) |
---|---|---|
1位 | 米国 | 669,374 |
2位 | サウジアラビア | 578,336 |
3位 | ロシア | 563,339 |
4位 | カナダ | 255,482 |
5位 | イラク | 226,147 |
北米、中東勢が上位にきていますね。
つづいて、主要な原油の消費国はこちらです。
2018年原油消費国上位5ヵ国
2018年 | 国名 | 消費量(千トン) |
---|---|---|
1位 | 米国 | 892,842 |
2位 | 中国 | 628,029 |
3位 | インド | 236,559 |
4位 | 日本 | 175,541 |
5位 | サウジアラビア | 156,144 |
やはりというか、GDP世界上位3国と人口の多いインドの消費量が高いです。
ちなみに次点はロシアで、消費量は146,289千トンです。
生産量と消費量の差で原油の輸出国か輸入国かがわかります。
原油輸出国か輸入国か?
- 生産量>消費量→輸出国(原油を他国に売っている状態)
- 生産量<消費量→輸入国(原油を他国から買っている状態)
原油価格からわかる重要なポイント
消費国のマクロ指標が悪いと原油安の材料になる
中国やインドのGDP成長率が予想より悪かったとします。
その時のマーケットは、
中国の経済成長が減速→経済を支える生産に必要な工場や機械の回転率が悪くなる
→機械設備のエネルギーとなる原油の以前より低くなる
と予想し反応しますので、原油安になります。
原油安が進むと経済環境が良くなってくる
先ほどとは逆の発想ですが、ある程度原油価格が下落してくると、
中国やインドなど経済規模も大きく消費国の実体経済は、
原油は何にでも使うものだから調達しないといけない→原油価格下落で調達コスト低下
→該当国にとっては経済的に助かる
ということになりますので、景気反転のシグナルにもなるのです。
おわりに
原油価格がうつしだすのは、実体経済そのものです。
そのことを今日は覚えておいてください。
今回の歴史的原油価格の下落の背景にあるのはやはり新型コロナウィルスによって、実体経済がかなりダメージをうけているということです。
ただ、過去大きな下落後にチャートが上昇をはじめていることから、マーケットは結局山と谷を繰り返します。
新型コロナウィルスについてはまだまだ今が底なのか、二番底がこれから来るのか見通すのが難しい状況です。
各国、ロックアウトを解除する動きが報道されたり、新ワクチンの開発を急ピッチで進めており明るいニュースも最近は見かけるようになってきました。
様々な景気指標を織り込んで動くのが原油価格ですので、一つのバロメーターとして原油の動きを追ってみることで、投資のタイミングを見図るのもいいかもしれませんね。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。