2020年コロナウィルス後、チャイナプラスワンとしてのベトナム

ASEAN

コロナウィルスの影響が拡大し、中国と直接・間接問わずビジネスを行う事業者の方にとっては、中国での生産も停滞し、チャイナプラスワンの必要性もますます高まってきていると思います。

ではどの国に生産移管含め検討していけばいいのでしょうか?

このあたりは、ぼくのブログ「コロナウィルスを契機に今チャイナプラスワンを考える」もご一読ください。

一つの選択肢として、直接投資認可件数が4年連続増加中で、「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査(JETRO調査)」にて今後の事業展開の方向性として「拡大」と回答した割合がASEAN最大である

ベトナム

があります。

本日はベトナムがどんな国なのか、日系企業にとって中国の代替地としての可能性の検討に値するのかを記載していこうと思います。

2019年は米中摩擦を背景に中国からの生産移管先としても注目されていたね

日本でも技能実習生や留学生など、活躍するベトナム人が増えていることも親近感を生む要因かもしれないね

日系企業はベトナムに何を求めるか

日系企業が現在のベトナムに求めるのは主に①に記載の部分です。
また、将来的には②・③を見据えていると考えられます。

  1. 生産コストが中国に比べて抑えられること
  2. ベトナムの成長が近年著しく、現地市場での売上増加が見込まれること
  3. 輸出増による売上増加が見込まれること

①については、日系企業の製造業ワーカーの月額基本給は中国・タイに比べると半額程度であり、最低賃金ベースでは半額以下ですので、人件費の面で優位性があります。

ベトナム基本情報

正式な国名はベトナム社会主義共和国、人口9,367万人(2017年統計局調べ)、国土面積は日本の0.88倍程度で仏教徒約8割の国です

(2018年)ベトナム基礎的経済指標

ベトナムの基礎的な経済指標は以下です。

ベトナム基礎的経済指標
JETRO基礎的経済指標より作成
  • 実質GDPの成長率が7%成長はASEANの中でもかなりの高成長国
  • 直接投資受入額は前年比若干減少しているものの、日系企業数は着実に増加
  • 対日貿易額も年々増加

している状況です。

(2018年)日系企業の対越動向

日系企業の対ベトナム進出動向は以下です。

2018年アジア国別拠点数
外務省データより作成
  • ベトナムにおける日系企業拠点数は2018年で1,920
  • キャノン、パナソニック、ホンダ、トヨタ、富士通、日本電産、ブリヂストン、富士ゼロックス、マブチモーター、イオン、ファミリーマート、ユニクロなども進出
  • 製造業の方が非製造業に比べ割合が高い
  • 中小企業の方が大企業に比べ割合が高い
  • 日系企業の進出が多いタイに似た構造となっている

という状況ですね。

(2018年)日越間の貿易製品動向

日本、ベトナム間の貿易製品の動向は以下です。

日本からベトナムへの輸出品
ジェトロ資料より作成
ベトナムから日本への輸出品
ジェトロ資料より作成
  • 電気機器、一般機械は日系企業の進出とともに加工貿易の割合が高い
  • 今後ベトナムのGDPが成熟するに従い国民の所得増による自動車産業の発展も見込まれる
  • アパレル関連、食品、家具などについてはベトナムからの依存度が高い

という状況です。

ベトナムの成長と日越関係の歴史

  • 1986年~ドイモイ政策が開始
    ドイモイ(DoiMoi)とは日本語で「刷新」を意味し、4つの政策のうち「市場経済の導入」により国営・公営以外に私企業や私有財産が認められ、国民の意識が大きく変わる契機に
  • 1990年頃~現在の双日である日商岩井と住友商事の2社によって、日系企業向け工業団地建設開始
    それを機に大手製造業が続々とベトナムに進出を開始
  • 2002年、実質経済成長率が7%になり、中国に並ぶ経済急成長国家として注目され出す
  • 2009年にEPA(Economic Partnership Agreement)が発行
    EPAが発行されたことで日本とベトナムの経済的結びつきが強まり、より多くの日系企業がベトナム進出を果たす契機に
  • 2013年7月~に安倍内閣総理大臣がTPP交渉に参加開始
  • 2019年1月~日本とベトナムを含む7ヵ国でTPP11が発効

日本とベトナムのビジネスとしての歴史は比較的浅いですが、近年EPAやTPPなどで、国家間での連携体制も整いつつあります。

ビジネス上の課題

現在のベトナムにおける課題は以下です。

  1. 人件費の高騰
    →上述の通り、ワーカーの基本月給は中国・タイなどと比べ半額程度であるものの、賃金上昇率は平均7.4%となっています。
    これは中国(5.7%)、タイ(4.0%)を上回っており、ベトナムは毎年平均7%以上の上昇率が続いています。
  2. 従業員の離職率の高さ
    →ジェトロの日系製造業に対する調査によると、13%の企業の「月当たり平均離職率が10%以上」との回答があります。
    人件費の高騰や、ベトナム人の気質などの要因で、人材確保が近年難しくなってきております。
  3. 市場の潜在力や成長性の期待値は高いものの、競合相手増加など利益確保がより難しい状況に
    →2001年~2005年にベトナムに設立、日系進出企業の2019年黒字見込み企業の割合は80.9%です。一方2011年~2015年設立の同割合60.5%、2016年~設立の同割合29.0%という数字が示す通り、先行者利益を享受できている比較的進出時期の早かった大企業に比べ、近年進出が増加している中小企業の競争環境は激化してきている可能性があります。

ベトナム人の一般的な気質は

基本的におおらか

仕事に対してシビア(金銭的な面で)

真面目

な感じです、これは一概に言えませんが。

ハノイの夜
ハノイの夜の一風景

まとめ

  • ベトナムは今後の成長力や安価な人件費で魅力的な国
  • 一方予想通りの成長を描く際は、近い将来ベトナムの代替地を検討する時期が来る
  • 人材確保の観点から、現地従業員との共存の方法を模索していく必要がある

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

個人的には、ベトナムは中国の生産移管の国としても、これから海外に初めて進出する国としてもチャレンジしてみる価値のある魅力的な国であると考えています。
ベトナムの基礎的な情報やその他制度、慣習などを他国と比較しながら、みなさまのビジネスのお役にてたてれば幸いです。

せっかく近年加速してきたグローバルの波を内向き志向となるのではなく、世界の人々と一致団結して共存共栄していく世界にしていきましょう。

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